モノを落とす装置が環境保全に貢献?~落下・衝撃試験機編~その3

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包装貨物落下試験について

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今回は「モノを落とすとなぜ壊れるのか?」「モノを落とす装置がなぜ必要なのか?」の続編として、第3弾は「モノを落とす装置が環境保全に貢献?」というお話しです。
その装置で行う試験は、「包装貨物落下試験」と呼ばれています。どういうことか、詳しくみていきましょう。

はじめに

前回は落下試験において「なぜ手で落としてはいけないの?」についてお話しいただきました。そこでは落下試験機を利用することが、高品質な製品開発につながっていることを知りました。一方で、製品だけでなく「包装」にも落下試験が実施されていると聞いたことがあるのですが、今回はそのあたりについて詳しく教えていただきたいです!

わかりました。

はじめに、「包装」について簡単に説明しましょう。
包装とは、製品が工場から出荷され、消費者がその製品を購入し、製品を使用するまでの一連の流れの中で、製品の品質を確保するために必要となる包装材料や容器だけでなく、製品を包装箱に入れる作業や包装箱に入った状態も含まれています。このように一言で包装といっても、非常に幅広い範囲が対象となりますね。

 

製品の物流過程では、製品の品質劣化や破損に直結する、振動や衝撃、温湿度などの様々な外力(ハザード)が発生することがあります。これらハザードから製品を保護し、安全な状態で顧客のもとに届けるために、包装による内容品の保護機能が重要となります。

 

そのため、包装が製品を確実に保護できているかどうかを確認する試験が実施されています。このような試験を実施しないまま市場に製品を流通させてしてしまうと、物流過程のなかでダメージが発生し、様々なクレームが生じるリスクがあります。このようなトラブルを予防するため、テレビや洗濯機などの家電製品、プリンタ、FAX機器など事務機器、自動車用部品や各種精密機器、飲料・食品、医薬品、日用品など様々な業界で、包装貨物落下試験が実施されています。

なるほど!
私たちの日常生活の裏側には企業が開発した製品に対して包装落下試験を行い、配送時に破損しないようテストを繰り返し、安全・安心を届けてくれているのですね!

包装貨物落下試験

ここでは、日本で唯一の衝撃試験装置と加速度計測機器の専門メーカーである神栄テクノロジー株式会社(以下、神栄テクノロジー)が提供している、物流過程に起こり得る落下や衝撃を再現する包装貨物落下試験機について説明します。
包装貨物落下試験機は、試験する包装貨物の重量によって、落下させる仕組みが異なり、以下の3種類の試験機があります。

 

■1つ目は一定の高さで包装貨物を保持するテーブルが、瞬間的に下方向に移動した後、扇状に回転運動し、貨物を落下させるタイプ(DTS-50/80

包装貨物の重量は最大80㎏まで試験可能

 

■2つ目は製品保持テーブルが衝突床面に格納されるタイプ(DT-300) 
包装貨物の重量は最大300㎏まで試験可能

 

■3つ目は切り離しフックタイプ(EMH-500/3000) 

包装貨物の重量は最大3000㎏まで試験可能

 

試験機活用の3つのメリット

Q.落下試験機と一言で言っても、用途に応じていくつかの種類があるのですね。前回のお話しのおさらいにもなりますが、あらためてこのような試験機を活用するメリットについて教えてください。

A.包装貨物落下試験において、専用落下試験機を活用することで得られるメリットは大きく3つあります。

メリット1:試験の繰り返し精度が高い
たとえば人手で落下すると、貨物が床面に衝突する瞬間、貨物の傾きが大きくなります(下の図をご確認ください)。これが製品へのダメージに大きく影響し、同じ高さから落下しても、あるときは壊れたり、次の試験では壊れなかったりします。このような場合、試験結果を正しく判断することは困難です。そこで、何度試験しても、だれが実施しても、同じようなダメージを発生させることができる専用の落下試験機が必要とされます。

※JISZ0200包装貨物-落下試験方法の基準についてはこちら

 

 

メリット2:作業者が安全に試験を実施できることです
メリット3:貨物の角りょう落下試験を誰でも簡単にすばやく実施できることです。

※落下試験では、箱の各面と、稜(りょう)線(箱の面と面がぶつかる線)、角のどこかをポイントに落下させます(下の図をご確認ください)が、角りょう落下試験の場合は角部分と稜(りょう)部分をポイントに試験を行います。

 

環境にも役立つ包装貨物落下試験

 

包装貨物落下試験機が環境保全に関係しているとはどういうことでしょうか?

包装貨物落下試験は、包装が過不足なく、緩衝材料使用量と製品保護性が両立しているかどうか、「適正包装」となっているかを評価するための試験です。

 

必要以上に多量の緩衝材料が使われる(過剰包装)と、包装箱も大きくなり、輸送効率が悪化します。すなわち、トラックに1度に積み込める包装箱の数が少なくなるため、多数のトラックを使わなくてはならなくなり、輸送時のCO2排出量が増加してしまいます。また、たくさんの緩衝材が使われているため、包装ゴミが多くなることで、廃棄に係るエネルギーも増えるなど、環境面からは良くない状態といえます。

反対に、緩衝材料の使用量が少なすぎる(欠陥包装)と、物流中のハザードにより製品が破損するトラブルが発生する危険性が高くなり、顧客対応や包装設計改善のための再設計に必要な無駄な費用や時間がかかるだけでなく、企業イメージが損なわれるリスクもあります。

適正包装であれば、廃棄ごみの最小化に加え、包装箱が小さくなることで輸送効率も改善され輸送時のCO2排出量の削減にも貢献するため、地球環境にやさしい包装といえます。

 

これまでに人手による落下試験と、落下試験機による落下試験ではその精度に大きな差があることを説明してきました。人手による落下試験では試験結果にばらつきが大きくなるため、正しい包装設計評価は困難となります。このため、過剰包装や欠陥包装になっていることに気が付かず、製品出荷してしまうことで、様々なトラブルに発展する危険があります。一方で包装貨物落下試験の場合は、誰がいつ・どこで実施しても精度の高い落下試験が実施できるため、包装設計の保護性を正しく判断することにつながり、包装設計の適正化に貢献しています。このように、地球環境にやさしい包装設計に貢献している包装貨物落下試験機は、間接的に環境保全に役立っていると言えるのではないでしょうか。

 

 

包装貨物落下試験と環境保全の関係がよくわかりました。「適正包装」という考え方ははじめて知りました。奥が深そうですので、また詳しく調べてみたいと思います。

落下試験機の活用メリットをより詳しく知りたい方は、以下より資料をダウンロードいただけますよ!

 

 

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おわりに

製品の品質、耐久性、包装を評価し、消費者に対してその信頼性を証明するため、落下試験は極めて重要です。人手による試験では実現できない精度と再現性を繰り返し実行できる落下試験機は、製品開発の現場において不可欠な役割を果たしています。

 

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